やり残したタスクが、夜になっても頭から離れない理由
布団に入ってから、今日消せなかったタスクを思い出す。明日でいいと頭では分かっているのに、同じことが何度も戻ってくる。スマホを開いてリストを見直し、余計に目が冴える。
日中の集中の話は前に書きましたが、やり残しが影響するのは日中だけではありません。夜まで、場合によっては週末まで届くことを示した研究があります。そしてもう一つ、そこから抜ける道を示した研究も。
金曜のやり残しは、週末の眠りまで届く
Christine Syrek らは 2017 年、働く人たちを 12 週間にわたって追いかけました1。週の終わりに「今週やり残した仕事」を、週明けに「週末のあいだ仕事のことをどれだけ反すうしたか」「週末の睡眠の質」を、毎週たずねる方法です。
結果は、同じ人でも、やり残しが多かった週の週末は、仕事についての反すうが増え、睡眠の質が下がるというものでした。性格として心配性な人がよく眠れないという話ではなく、同一人物の週ごとの変動として出ている点が重要です。仕事は金曜に置いてきたはずなのに、終わっていないものは勝手についてくる。
ただし、これは日誌にもとづく観察研究です。やり残しを実験的に増やしたり減らしたりして睡眠の変化を確かめたわけではないので、因果の向きを断定できるほどの設計ではありません。「やり残しが多い週は眠りが浅い、という対応関係が本人の中で繰り返し観測された」——確かなのはそこまでです。
頭を静めるのに、「終わらせること」は必要なかった
ここで手詰まりに見えます。やり残しが頭に残るなら、全部終わらせるしかない。でも全部終わる日は来ない。
E. J. Masicampo と Roy Baumeister が 2011 年に発表した一連の実験は、この袋小路に別の出口を示しました2。未達成の課題を思い出させられた被験者は、その後の無関係な作業(小説を読むなど)の最中に課題のことが繰り返し頭に割り込んできます。ここまでは予想どおりです。
興味深いのはその先で、「いつ・どこで・どうやるか」を具体的に計画させると、この割り込みが消えました。タスクは 1 ミリも進んでいないのに、です。
頭が騒ぎ続けていたのは、タスクが「終わっていないから」というより、「行き先が決まっていないから」だった——この実験群はそう読める結果を積んでいます。置き場所さえ決まれば、頭は見張りをやめる。
線が引かれていないものは、閉じられない
Syrek らが調べたのは週単位の職場の話で、寝る前に ToDo アプリを開く場面ではありません。Masicampo らの「計画」も、個々のタスクについて具体的な段取りを書かせるもので、アプリの表示形式の話ではない。
よくある ToDo リストは、全部消えるまで「終わり」が来ない形をしています。今日どれだけ消しても、リストの下には残りが並んでいて、一日のどこにも「ここまでで完了」という線がない。線がないものは、閉じられません。
今日やる数件を朝に決めるというのは、選んだ数件に境界を引くと同時に、残り全部に「今日はやらない」という行き先を与えることでもあります。Masicampo らの実験の計画ほど個別具体ではないので同じ効果があるとは言えませんが、向きは揃っている。頭が見張り続けるのは、宙に浮いているものだからです。
一日を閉じられる形にする
TodOne は、今日ぶんのタスクだけを表示します。残りのタスクを消すと「この日のタスクはすべて完了済みです」と表示され、一日がそこで終われるようになっています。
やり残しをなくす道具ではありません。やり残しは明日も出ます。そうではなく、「今日はここまで」という線を朝に引いて、夜にはその線の内側だけを見て閉じられるようにする道具です。ここで挙げた研究がその設計を保証するわけではありませんが、なぜその形にしたのかの理由にはなっています。
全部は終わりません。今日ぶんなら、終わります。
Footnotes
-
Syrek, C. J., Weigelt, O., Peifer, C., & Antoni, C. H. (2017). Zeigarnik’s sleepless nights: How unfinished tasks at the end of the week impair employee sleep on the weekend through rumination. Journal of Occupational Health Psychology, 22(2), 225–238. ↩
-
Masicampo, E. J., & Baumeister, R. F. (2011). Consider it done! Plan making can eliminate the cognitive effects of unfulfilled goals. Journal of Personality and Social Psychology, 101(4), 667–683. ↩