TodOne

「同時に進めている」つもりでも、実は切り替え続けているだけかもしれない

複数のタスクを並行して進めている、という感覚がある。仕事用のリストと家事のリストを行き来し、プロジェクトAの続きをやりかけたままプロジェクトBに手をつける。同時に進めているつもりでいても、なぜか一つひとつが遅い。

切り替えのたびに、頭の中で2つの処理が起きていた

Joshua Rubinstein、David Meyer、Jeffrey Evans は 2001 年、若年成人を対象に、計算問題と図形の分類といった性質の異なる課題を交互に行わせる実験を4つ行いました1。人が課題を切り替えるとき、頭の中で何が起きているかを調べるためです。

その結果、切り替えは「目標の切り替え」と「ルールの切り替え」という2つの段階に分かれることが分かりました。まず「今度はこっちをやる」と意識を向け直し、次に「さっきの課題のルールを止めて、今度の課題のルールを起動する」という処理が続けて起きる。この2段階そのものに時間がかかり、参加者はどの課題の組み合わせでも、切り替えのために時間を失っていました

複雑な課題ほど、切り替えの代償は大きくなる

もう一つ分かったのは、失う時間が一律ではないということです。課題が複雑になるほど、切り替えにかかる時間は大きくなりました。単純な課題どうしの切り替えより、複雑な課題への切り替えのほうが、時間の犠牲は不釣り合いに大きい。

複雑な課題と同様に、不慣れな課題に切り替えるときにも時間が大きくなりました。参加者はよく知っている課題に戻るときのほうが速く元のペースに戻れました。切り替えの重さは、切り替え先の課題がどれだけ複雑か・どれだけ不慣れかによって変わる、ということになります。

並行しているつもりの作業は、切り替えの回数を増やしているだけかもしれない

複数のプロジェクトを並行して進めるという行為の中身が、実際には「性質の異なる課題への切り替え」の繰り返しなのだとしたら、代償は思っている以上に大きなものになるでしょう。この研究が測ったのは1回の切り替えで失う時間です。1回そのものは、体感できないほど短いこともあります。ただし研究が示したのは、その短さが保たれるのは単純な課題どうしを行き来するときで、複雑・不慣れな課題へ移るときには不釣り合いに長くなる、ということでした。

性質の違うリストを行き来するほど1回あたりの代償は重くなり、行き来した回数のぶんだけそれが積み上がる、ということになります。

同時並行に進めているのに、なぜか進みが遅いと感じる原因の一部は、切り替えそのものに払っている時間なのかもしれません。

TodOne がどうしているか

TodOne は、プロジェクトやリストを分けて並行させる作り方をしていません。今日ぶんの数件だけを一つの画面に並べ、「あと2件で今日が整います」という形で残りを見せます。切り替える先のリストやルールがそもそも用意されていなければ、少なくともその分の切り替えは起きません。

ここで挙げた研究は、実験室での性質の異なる認知課題についてのもので、タスク管理アプリの使い方を検証したものではありません。それでも、複数のことを並行して進めている感覚の裏で切り替えが起き続けているのだとすれば、切り替え先そのものを減らしておくことには意味があるかもしれません。

中断されても遅れは出ない話は、外からの中断によって元の作業に戻ってくるまでの負荷を扱っていました。今回の話は、外からの中断ではなく、自分の意思で複数の作業を行き来するときに起きていることです。どちらも「戻る・移る」という同じ動作の周辺にありますが、扱っている場面は別のものです。


Footnotes

  1. Rubinstein, J. S., Meyer, D. E., & Evans, J. E. (2001). Executive control of cognitive processes in task switching. Journal of Experimental Psychology: Human Perception and Performance, 27(4), 763–797.