TodOne

決めたのにやらなかった、を減らすのは意志ではない

やると決めた。手帳にも書いた。それでも一日の終わりに、その行がそのまま残っている。

決めたことが実行されない理由は、たいてい「やる気が足りなかった」に回収されます。ただ、実行率を扱った研究の見立ては少し違います。足りなかったのは意志ではなく、決め方の具体性だったという見立てです。

「やる」と決めるだけでは足りない

心理学者の Peter Gollwitzer は、目標を持つことと、その目標を実行に移すことを別の段階として扱いました。前者が「〜したい」という目標意図、後者が「いつ・どこで・どうやるか」まで含めた実行意図(implementation intentions)です。

言い方を変えると、こうなります。

  • 目標意図: 部屋を片づけたい
  • 実行意図: 帰宅して鞄を置いたら、まず机の上のものを箱に入れる

Gollwitzer と Paschal Sheeran は 2006 年、この実行意図を扱った多数の研究をまとめたメタ分析を発表しました1。結果は、実行意図を立てた場合のほうが、目標を持つだけの場合よりも実行率が高いというものでした。しかも効果は特定の領域に限らず、健康行動から日常の用事まで幅広い課題で観測されています。

なぜ効くのかについて、彼らはこう説明しています。「帰宅して鞄を置いたら」のような具体的な状況を先に決めておくと、その状況が来たときに行動が半ば自動的に立ち上がる。やるかどうかをその場で決め直さずに済むぶん、意志の出番が減る、と。

ここで注意しておきたいのは、これがメタ分析——個々の研究を統合した結果だという点です。統合された研究には効果が大きく出たものも小さかったものもあり、「実行意図を立てれば必ずやれる」という保証ではありません。言えるのは「決め方を具体的にすると実行率が上がる傾向が、多くの研究にまたがって観測されている」までです。

「今日やる」は、実は具体的ではない

この見立てが厄介なのは、ふだん自分では十分に具体的なつもりでいることです。

「今日やる」は、目標意図と実行意図のあいだにあります。日付までは決まっているものの、一日のどこでやるかは決まっていない。だから朝から晩まで「まだやれる」状態が続き、やらないまま夜になっても、その瞬間まで先延ばしだと気づけません。

タスクの一覧が長いときはさらに厄介です。どれも「今日やる」の顔をして並んでいるので、どれから手を付けるかを、その場で決め直す作業が毎回発生します。決め直しは実行意図が省いてくれたはずのもので、リストが長いほどその回数は増えます。

リストの長さと具体性は、たぶん交換できる

Gollwitzer らが調べたのは、被験者に立てさせた計画とその後の実行率で、ToDo アプリの表示件数を調べたものではありません。

そのうえで、こう考えています。一日に置く件数を数件まで減らすと、件数を減らしたこと自体が、具体性を一段上げます。10件が並んでいれば「今日のどこか」でしかないものが、3件なら「朝・昼・帰宅後」くらいの見当がその場で付く。実行意図を明示的に書かなくても、量が減ったぶんだけ、いつやるかが自ずと決まる

もちろん、これは実行意図そのものではありません。「帰宅して鞄を置いたら」ほどの具体性はない。ただ、方向としては同じ側を向いています——その場で決め直す回数を減らす、という方向です。

TodOne がどうしているか

TodOne は、今日ぶんの数件だけを表示します。件数が少ないので、並んだ項目それぞれについて「いつやるか」の見当が付けやすくなります。

この記事で挙げた研究は、アプリの表示件数について何かを保証するものではありません。実行意図の効果は、あくまで「いつ・どこで・どうやるか」を決めた場合について観測されたものです。それでも、決め直しの回数を減らす方向に道具を寄せる理由にはなります。

決めたのにやらなかった日は、意志が足りなかった日ではなく、決め方が粗かった日かもしれません。やり残しが夜まで残る話とも、同じ一点で繋がっています——宙に浮いたままのものが、いちばん重い


Footnotes

  1. Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes. Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119.